吉村昭

吉村昭の小説は重い.とっても重い.文体,テーマ,背表紙の色.全部重苦しい.
でも,その重苦しさが作品を引き立てていると思う.重くて読みにくい,ではなくて重いからこそ,読み進んでしまう,そんな作品が多い.単なる戦記物作家ではないのでお間違えなきよう.
「零式戦闘機」「羆嵐」「高熱隧道」この3作品は特にお薦め.
羆嵐」は僕が初めて読んで,吉村昭の世界に引き込まれるきっかけになった作品.結構うすっぺらい文庫本なのですぐ読める.開拓時代の北海道の村が冬眠から目覚めたクマに襲われる話.クマの描写がなんともリアルでこわい.これを読んでみて面白くなければ他の作品を読んでも面白くないのではなかろか.ちょうど短いし最初に読むのに最適かもしれない.
「零式戦闘機」零戦製造の話.終戦間際はどんなに大変な思いをして,どんなに最優先事項として,零戦をつくっていたたかが手に取るようにわかる.でもこんなんやったら戦争負けてとーぜんやなぁとも思う.各務原は”かがみはら”と読むんだと知ったのもこの作品.読んでなかったらいまだに”かくむがはら?”とか読んでそう.
「高熱隧道」黒部ダムのトンネル工事の話.昔のトンネル工事の悲惨さがよくわかる.こりゃトンネルに幽霊も出るわな.泡雪崩こわー.

いまだに吉村昭好きの人には出会ったことないなぁ...

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